無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない

 それなのにシャルロット嬢はわざとらしくよろけ、俺の胸元に突進してくるじゃないか! 騎士をしていると相手の動きが意図的なのか判断できるのだが、今回は絶対にわざとだ。俺はそれを瞬時に見抜き、気づけばシャルロット嬢の襟を後ろから強引に掴み引き剥がしていた。


「ぐえ!」
「騎士に断りもなく近づくと、大変なことになります」


 彼女からカエルの様な声が聞こえたが、無視してギロリと睨むと「こわぁい……」とクスンクスン泣き始める。少し焦ったがタイミングよく雨が降ってきたので、近くを通りかかった騎士仲間に送るよう頼んだ。


(結局あのシャルロット嬢は何しに来たんだ? レイラに確認してみよう。もしかしたら知人でもないかもしれない)


 前回の手紙に返事がないのも気がかりだ。体調を崩したか? と思ったけど、レイラのお父さんの手紙からは元気で過ごしていると書いてあった。じゃあ、俺の手紙にだけ返事していないのだろうか……


 舞踏会が近いこともあり城の警備で忙しい。しかも夜間の警備になってしまい、直接会いに行くことができなかった。それでも何度も手紙を送り、ドレスも届けたが返事はない。


 もしかして俺はフラレてしまうのだろうか。好きな男ができたのだろうか。一気に血の気が引き、不安が襲ってくる。最後に会ったのは、あの雷の日。あんな醜態をさらしたのだから、きっと愛想をつかしたのだろう。本当の男らしさを持ったやつの方がいいに決まってる。


 俺はしょせん、見かけだけのニセモノだ。
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