無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない


 それでもあの日の帰り際、元気がなかったレイラのことが気にかかる。しかも日課である手紙を送っても、返事が来ない。レイラは文章は短くても、その日の内に返事をするんだが……。どうしたんだろうか。


 次の日にはシャルロットという名の令嬢が来た。話したことは無かったが、レイラのことで相談があるというので面談を許可する。それなのにレイラのハンカチの刺繍がどうとか、たいした話をしないじゃないか! 俺はレイラに関することだと飛びついてしまうから、両親にいつかおまえはレイラ詐欺にあうと笑われていたが、本当かも知れない。


 それにしても彼女は話す時の距離が近い。ものすごく不快だ。間合いを詰められるのは騎士の職業的に危険を感じるから、やめてほしいのだが。


 初対面の令嬢でなおかつレイラの知人だと思うと、きつく注意もできない。どうしたものかと思っていると、彼女がスッと俺に近づき、「わあ!ここにも家紋があるんですね」と俺の胸元を触ろうとした。


 レイラのことを考えていたせいで一瞬反応が遅くなる。それでも胸元にさわろうとしてきた手を掴んで阻止した。

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