意地悪王子様のホワイトデー大作戦
「見て、千歳っ、綺麗なお魚いっぱい」

実花子は、グレートバリアリーフに棲んでいる魚達を展示している水槽に駆け寄ると、食い入るように眺めている。

「ほんとだ、見たことない魚ばっか」

「千歳って、水族館あんまり来たことないの?」

「うん、小さい頃に両親と来たくらいかなー」
「ふぅん、そなんだ」

実花子の返答は、そっけないが、その表情は、さっき魚を見始めた時よりも、もっと嬉しそうだ。僕は、そんな実花子を魚を見るフリしながら、つい見惚れた。

(可愛いな)

なんでもいいから、僕との初めてを積み重ねていきたいと思ってくれてる実花子の気持ちをこれからも大事にしてあげたい。

「実花子、初めての水族館はどう?」

「うんっ、すっごく楽しいっ」

「そっか、良かった」

「あのね、前も話したかもだけど、小さい頃、弟が、海で溺れかけてから、水怖がるようになっちゃって……水族館もダメで。だから、家族とも来たことなかったの。千歳、今日は、連れてきてくれてありがとね」

切長の瞳を細めると、実花子が、子供みたいに無邪気な顔で笑った。

(やば……)

僕は、思わず口元を覆った。
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