独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
自宅に到着し、着替えを済ませる。

汚したスカートを手にとったとき、硬い感触があった。

怪訝に思いポケットに手を入れると、豪華な指輪が入っていた。


「……なに、これ?」


見覚えのないものに、思わず声が漏れる。

宝石類に疎い私でも、指輪に施されている装飾や石類は高価なものだろうと予測できる。

中心で輝きを放つのは大きめのダイヤモンドで、その周りにも細かなダイヤモンドがびっしり埋め込まれている。

このスカートは昨夜クリーニングから戻ってきたばかりだし、どこかでポケットに入ったとしか考えられない。


「……もしかして……今朝ぶつかった人の?」


朝からの記憶を辿るが、今日は仕事での外出もなく、やはりあの女性しか思い当たらない。


どうやって返せばいいの?


連絡先はおろか名前も知らない。

きっと今頃、困って探し回っているのではないだろうか。

悩みに悩んで、明日できるだけ早く警察に届けようと決めた。


土曜日の朝、朝食を終えて身支度を整える。

デートする恋人もいない私は、いつも週末にまとめて日用品や食料品の買い出しに出かけている。

恋愛に興味はあるけれど、社会人になってすぐ付き合い始めた人とは、休日が合わず時間がすれ違い、段々と心の距離が離れ別れてしまった。

私なりに積極的に会う時間を取っていたつもりだったが、元恋人には物足りなかったらしい。
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