独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
俺の子を身ごもっているのに離婚を考えているのか? 



まさか一貴を頼るつもりか?



最悪の、妄想じみた考えが頭をよぎり、帰宅するや、最低な態度で彩萌を問いただした。

今、思い返してみても浅はかすぎる自分の振る舞いが恥ずかしく、嫌気がさす。

あのときの彩萌の、萎縮し、感情が抜け落ちたような表情が目に焼き付いて離れない。

やはりきちんと謝って、心の底に抱く感情を素直に打ち明けようと考えていた矢先、どうしても回避できない札幌への出張があった。

後ろ髪をひかれる思いで出発し、できるだけ早く帰宅して彼女と話そうと決めた。

普段の倍近い集中力で仕事をこなし、帰り着いた家には人の気配がなかった。



――まさか、出て行ったのか?



焦って彩萌に電話すると、電源が入っていないようだった。

室内に取り立てて変わった様子はない。

着替えや荷物も、持ちだしたような形跡はない。



もしや、なにかあったのか?



体調不良? 



急用?



緊急事態ならば、連絡がくるはずだ。


でも万が一、電話すらできない状況だったら?


最悪の事態ばかりが思い浮かぶ。

スマートフォンを握る手に無意識に力が入り、手のひらに嫌な汗が滲む。



彩萌……!



今日、どこに行くと言っていた? 


思い出せ、なにを話した?


必死に記憶を探るが、今朝の彼女は言葉少なで俺と目を合わせようとしなかった。

きっと俺が責めた件を気にしていたのだろう。

なんで、後回しでいいと思ったのか。

一番大切な人を傷つけて、放置して、仕事をしている場合ではなかった。

せめて、帰宅したらすべて話すと告げるべきだった。
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