独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
13.手を繋いで
「ガタンゴトン、電車だね」



「うーうー」



私の足の間に、不安定ながらも座り込んだ(かおる)が嬉しそうな声を上げる。

離乳食を食べ終え、今は絵本を読んでいる。

薫は電車や乗り物が大好きで写真や絵を見せるととても喜ぶ。


ひとり息子の薫は、先週七カ月を迎えた。

可愛い乳歯が生え始め、離乳食も少しずつ口にしている。

予定日の二日前に元気な産声を上げた息子は、すくすく成長している。

初めての陣痛は言葉にならないくらいにつらく、出産の大変さを痛感した。

命を送り出すというのは本当に神秘的で大きな出来事だ。


妊娠三十六週を過ぎたあたりから、瑛さんは仕事を少しずつ整理しだした。

義父やほかの方々に頼み込み、私がいつ出産してもいいように準備してくれていた。

義母は私の体を心配すると同時に瑛さんに如何に出産、新生児のお世話が大変かを教え込んでいた。



『彩萌さんは産後一カ月近くは体を休めて癒さなくちゃいけないのだから。あなたがしっかりするのよ。助けが必要ならすぐに行くから、遠慮なく言ってちょうだい』



義母の温かさに胸がいっぱいになり、鼻の奥がツンとしたのは懐かしい思い出だ。
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