【砂の城】インド未来幻想
 ――イシャーナ様は、私の想いを受け取ってくださっただろうか――?

 挫けそうな時、不思議と必ず現れて、立ち上がらせてくれた温かな微笑み、捧げられた幾つもの贈り物にも愛情にも、礼として見合う程の時間であっただろうか。

 身体を芯から温めてくれる湯の中で膝を抱え、少女は溜息とも安堵とも分からぬ空気を吐き出した。そうであれたことを願って、腕の中に得た自信と共に我が身をきつく抱き締めた。

 湯浴みを終えたナーギニーは、用意されていた淡い水色のサリーに着替え、長い黒髪を乾かし、いつものように美しく編み込んだ。シャニが初めての昼食会で「どうぞごゆるりと我が地をご堪能あれ」と告げた六日間は、とうとう本日で終わりを迎えた。明日にも正午の(うたげ)は今までと同様に催されるが、それこそが『寵姫(ちょうき)選良披露』の場となる。少女達に与えられるのは、天国であるか地獄であるか、どちらにせよナーギニーにとっては後者であることは否めないが。


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