【砂の城】インド未来幻想
「私は皆の前で恥を掻かされたのだ。お前達の手前、誰も私を(わら)ったりなどしなかったがな。私はお前の手の甲に詫びの口づけを乞い許された。その時お前の眼を見たのだよ。偉大なる神は我が邪眼をもってしても壊されないとは驚きだったがね。……お前は憐みの眼差しを向けていた。その眼に呪いを掛け、次の時代、過去を失くした人間に生まれ変わるよう操作したのだ。そしてナーギニー……いや、美しいパールヴァティーにも同じ行為をした」

 シヴァの傍らに佇むパールヴァティーは、刹那哀しそうな瞳にシャニを映し込んだ。自分達がシャニを招いたのは、彼もまた神と呼ばれる立場にあったからだ。土星の神――シャニ。彼の邪眼が例え見た物を壊し尽くすといえども、客人にお披露目しない訳にはいかない。夫であるシヴァがどうにかしてくれるとは思っていても、息子の頭部が砕かれた時の衝撃は、計りしれなかったことは間違いない。それでも自分はもちろん、シヴァが彼を蔑むなど有り得ない……パールヴァティーは、そしてシヴァは、あの事件が与えた歪んだ末路に心の奥底で痛みを発した。


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