婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 それから三日後だ。私は決意を新たに、最後の判定をしてくれるルノルマン公爵家へ向かうことになった。

「私が審判(ジャッジ)を勤める、メイガン・ルノルマンだ」
「ラティシア・カールセンと申します。よろしくお願いいたします」

 通された部屋で待っていたのは、女当主であるルノルマン公爵様だった。淡い水色の髪にアイスブルーの瞳は鋭く、まるで氷のように冷たい印象を受ける。口調も端的で無駄な話をしない。
 そこで一枚の紙を差し出された。

「今回の判定試験では、この計画書通りに視察や交流をしてもらいたい。そして、後日そのレポートを提出してほしい」
「承知しました……あの、それだけでしょうか?」
「そうだ。そのレポートを読み、合格かどうか判断する」

 前の二件が結構ハードな内容だったので、拍子抜けする。それに、レポート提出だけで決められるとなると、不興を買うチャンスはあるのだろうか?
 どちらにしても私からは提案できないから受け入れるしかないのだけど。

「かしこまりました。レポートの提出期限はございますか?」
「翌日の夕方までに私のもとへ届けるように。では下がってよい」

 なるほど。予定は一日置きに組まれているのはそのためか。内容は街の視察や、孤児院の訪問、お茶会への参加だ。今回はレポート内容を酷く書けばいいだけなので、良心も痛まない。イケると、私は確信した。

 完璧なカーテシーをして、私は軽い足取りでルノルマン公爵家の屋敷を後にした。



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