婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

「そこの女が治癒魔法を使えるかと、お前たちの素行調査だ。お前たちの所業はすべて調べがついてる。それにいつまでも僕の婚約者を呼び捨てにするな。お前はもうラティには関係のない人間だ」

 ハッと気付いたように、マクシスが口元に手を当てるが今更だ。僕の殺気を感じ取ったのか、青ざめた顔で謝罪の言葉を吐き出した。しかし反省の色はまったく見られない。

「うぐっ、それは、大変申し訳ございません……ですが、私たちはやましいことなどしておりません!」
「はあ、すべて調べがついていると言っただろう。いい加減あきらめろ」

 こいつの頭に詰まっているのは綿かゴミ屑か?
 ここまで話の通じない相手は——ああ、帝国の皇女以来だな。
 嫌な記憶を思い出させる目の前の男に苛立つばかりだ。

「なぜですか!? 罪など犯しておりません!!」
「僕のラティを一方的に婚約破棄して、義妹を後継者として書類を偽造して婚姻し、未成年のラティを伯爵家から追放したな? 不貞行為、公文書偽造、保護責任遺棄……他にもあるが、これが罪でなければなんだ?」
「……っ!!」

 まったく理解できない男のために、これでもかと親切丁寧に説明をしてやった。ようやく言葉を無くして黙り込んだので、話を次へ進める。
 ここからが、本日のメインイベントだ。

< 174 / 256 >

この作品をシェア

pagetop