婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 侍従が私の分までティーカップを用意してくれた。これは最後の紅茶を飲めということだろうか?
 紅茶をひとくち飲んで、フィルレス殿下が話しはじめた。

「実は、今日はラティシアに頼みがあって来てもらったんだ」
「頼みですか? 私は処分を受けるのではないですか?」
「処分?」

 なんの話だとフィルレス殿下が聞き返す。

「昨日は緊急事態とはいえ、フィルレス殿下の御身に触れたので不敬罪で処罰されると思っていたのですが……」
「誰がそんなことを言ったの? むしろ命の恩人に罰を与えるとか意味がわからないよ」

 なんということだろう。聖人君子のフィルレス殿下は、昨日の治療を罪に問わないというのだ。真面目にやってきたことが、正しく報われたような気がした。
 これなら治癒室のみんなも安泰だと、胸を撫で下ろす。

「そうでしたか……では、どなたかの治療ですか? それとも毒についての捜査協力でしょうか?」
「昨日の犯人はすでに捕らえてある。それよりもラティシアに治癒魔法をかけてもらって驚くほどの効果があったから、これからも頼みたいんだ」

 これからも頼みたい? フィルレス殿下——この国の王太子が? 私に?


 それは、今までの努力が実ったと思える瞬間だった。


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