婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

「ラティシア、おはよう」
「フィルレス殿下、おはようございます」

 始業時間の半刻前にはやってきたけれど、すでにフィルレス殿下は業務を始めていて決裁済みの書類が高く積み重なっていた。

「申し訳ございません、初日から登城するのが遅れました」
「いや、ちょうどいい時間だよ。今日は僕の都合で早く来ただけだから。専属治癒士の制服もよく似合っているね」
「ありがとうございます。では早速ですが専属治癒士の仕事として朝の体調をお調べいたしますか? それとも皆さまにご挨拶をするのでしょうか?」
「……そうだね、体調は大丈夫だし挨拶は後ほど。その前に君にしか頼めないことがある」

 私にしかできないことといえば治癒士としての仕事だろう。私は気持ちを引き締めて、フィルレス殿下を真っ直ぐ見つめた。

 体調は問題ないと言っていたとおり、顔色はいいようだ。やはりこの時間でこれだけの仕事をこなされたからなのか、すでに疲れが出ているように見える。
 だけど癒しの手(ヒールハンド)を使えば、これくらいは一瞬で治癒できる。他に調子の悪いところがあるのだろうか?

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