婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。
翌朝、私はすでに手配されていた新しい制服へ腕を通した。
これからは専属治癒士の証であるロイヤルブルーのワンピースを身にまとう。胸元には純白の十字が刻まれ、治癒士としての誇りが湧き上がった。
「さあ、今日からはお父様と同じ専属治癒士としてバリバリ働くわよ!」
《張り切り過ぎて失敗するな、ラティシア》
いつも口の悪いバハムートが、興味なさそうにしながらも心配してくれる。
「そうね、空回りしないように気を付けるわ」
《まあ……どうにもならない時は我が助けてやるが》
ふいっと顔を背けながら、頼もしい言葉を言ってくれる。いつだって私が呼ぶ前に、困った時は現れてくれるから照れ隠しだってすぐにわかる。
「心配してくれてありがとう。本当に困った時は助けてもらうわ。じゃあ、行ってくるわね」
手のひらサイズのバハムートに見送られて、私は宿舎を後にした。
バハムートの優しさにずいぶん癒されたなと思い出す。朝の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んで、大きく一歩を踏み出した。