婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

「後継者の座もマクシス様も、もうわたしのものなの! お義姉様では不釣り合いだったのよ。そもそも治癒魔法しか使えないのに伯爵家を名乗るなんておかしいわよ!」
「それは……確かに攻撃魔法は使えないけれど、代々宮廷治癒士として国王陛下もお認めになっているし、皆様のお役に立っているわ」

 私たちカールセンの血を受け継ぐ者は、攻撃魔法が使えない。その代わり治癒魔法に特化した一族だった。

 我が一族は『癒しの光(ルナヒール)』という特殊魔法が使える。これはこの世界を創造したと伝承される神々のひとり、月の女神の血を引くからだ。その代わり攻撃魔法がいっさい使えない。

 このヒューレット王国は王族が太陽の創世神の末裔で、莫大な魔力と攻撃に特化した性質から、貴族の間でも攻撃魔法が得意な家門が力を持っていた。
 だからカールセン伯爵家は貴族の中では価値がないに等しい。だが、その特殊魔法で何度も王族や貴族たちの命を救ってきたこともあり、代々宮廷治癒士という役職を与えられていた。

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