虐げられた臆病令嬢は甘え上手な王弟殿下の求愛が信じられない~イケニエにされたはずが好感度MAXで歓迎され祝福され愛されて嫁ぐことになりました~

 第二姫殿下のミアの場合は、犯行に及ぶのは男だけだ。主に食事や生活範囲内で暗殺、あるいは事故に見せかけた殺人を目論んでいる。
 第三姫殿下リリアンの場合は、贈り物や、菓子やお茶などでこちらは侍女を買収しているのだが、厄介なのは届ける侍女たちは中身を知らないという点だ。

「魅了された男たちに関しては同情の余地はないですが、侍女たちは指示されたケースが多いので判断が難しいかと」
「──というと、上の立場の誰かが運ぶ際に指示を出しているということか?」
「いえ。同じ給仕の同僚から運んでおいてほしいと頼まれたと証言しています。ただその者の特徴を聞いても霞がかかったように思い出せないとか」
「ふむ……」
「セドリック様、オリビア様への贈り物の数を減らすのはどうでしょう?」
「なっ、今だって厳選した上で以前よりは減らしている!」

 竜魔人にとって伴侶に贈り物をするのは求愛行動の一つで大事なことだ。だからこそ毎日贈り物をしている。それにオリビアの喜ぶ顔が嬉しいのもある。百年前はいつもお古のドレスを何度も縫い直して着こなして、代わりに私やダグラスやスカーレットの服にお金を使っていたのも知っている。

「オリビアは今までずっと贅沢とは程遠い生活をしていたのだ、だから──」
「ですが毎日のように量が多いと言われているではありませんか」
「うぐっ……。あれでも減らした。あれ以上は──」

 正直、オリビアへの愛情を毎日の贈り物に込めているが全く足りていない。だが私だけが満足するだけでは意味がないので、オリビアが困らない程度にしていた。それでも多いとは言われるが、贈り物を手に取って嬉しそうにする姿が見たい。あと私のために着飾ってくれるのが嬉しい。

「量ではなく質で攻めるのです」
「質、か」
「たとえばネックレス──いえ、指輪など毎日、陛下が、直接、贈れば、オリビア様の、笑顔を独占できます!」
「そうです、陛下。ご自身でオリビア様にお渡しすれば、さらに喜ばれるかと!」

 力説するサーシャの目は真剣だ。アドラも賛同し煽る。
 たしかに。いつもお昼過ぎに贈っていたが、一緒にいる時に贈物を手渡したことはない。オリビアがどのような反応を見せるのか──。
 喜び綻ばせる笑顔、顔を赤らめる姿を思い浮かべただけで「見たい」と率直に思った。

「よし、明日からは私が直接オリビアに贈り物を手渡そう」
「はい」
「そうしてください。とてもお喜びになります」

 サーシャとアドラは問題が一つ解決に向かったことを喜びつつ、次の問題事項に入った。なんだかんだ二人とも有能で助かるのだが、なんだかうまく誘導されているような気がしなくもない。
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