麗しの王様は愛を込めて私を攫う
 その翌日、私にまた名前を知らない方から贈り物が届いた。

「村長さん、どうしてこの方は贈り物をくれるの? 名前も言えないような人なんでしょう? 後で渡した分のお金を払えと言われたりしない?」

 私は持ってきてくれた村長さんに、不安になり聞いた。
 こんな風に物を贈ってもらう理由が私にはないのだから。

 すると村長さんは少し顔色を悪くした。

「メアリー、大丈夫だよ。お金を請求する様な事は決してされないよ。……おかしな人ではないから、安心して貰っておきなさい。そうしてくれないとワシが……」

 全てを話す事は難しいのか、語尾を弱くした村長さんにそれ以上聞く事は出来なかった。

 受け取った箱の中には、上質な生地の青いワンピースが入っていた。

 まるで採寸して作られたかのように私にピッタリのワンピース。

 嬉しかったけれど、私にはこんなに上等な物を着ていくところなんてない。
 私はそれを、大切にタンスに仕舞った。


 けれど、一体なぜ名前を言わない人は、私に贈り物をくれるのかしら?

 それに、村長さんはどうしてあんなに怯えていたのかな?
 分からないわ……。
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