麗しの王様は愛を込めて私を攫う
 それから二年の月日が流れた。
 メアリー様にはリシウス殿下の指示で『影』という護衛が付けられていた。

 メアリー様につけられた影は、彼女の全ての行動、言動をリシウス殿下に伝える役目を与えられていた。もちろん命に関わるような事があれば助けるよう指示を受けている。


「僕のメアリーを虐めている奴がいる」
「影からの報告でしょうか」

 リシウス殿下は私室の書斎テーブルに頬杖をつき、つまらなそうに呟かれる。

「そいつ、僕があげたリボンも取ったらしいんだ……消そうかな」

 何気に、かなり物騒な事を言っておられる。
 しかし、あの目は本気だ。

「消す、と仰いますと?」
「僕が消すと言ってるんだよ? 全てだ」

 全て、それはこの世に存在する事を指している。

「リシウス殿下、人を簡単に消してはなりません」

 人が簡単に人を殺めてはならない、どんな命も尊ぶべきだと苦言すると、リシウス殿下は大層不服そうな顔をされながらも受け入れられた。

「じゃあメアリーの前からいなくなるだけにする。それなら構わないだろう?」
「それでしたら、問題ありません」

 それからすぐに、リボンを奪った娘の家は焼け落ち、一家はメアリー様の前からいなくなった。
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