スパダリ部長に愛されてます
「いらっしゃいませ!」
スペイン料理屋さん「LOS REYES MAGOS」のドアを開けると、
明るい店員さんの声が響き渡る。
テーブルに案内されると、部長がメニューを見ながら、
「好き嫌いとか、アレルギーある?
忘年会の時、結構飲んでたよね。洋子さん、ワインもいけるよね?」
矢継ぎ早に質問され、お店の雰囲気にももまれ、何がなんだかわからない。
店内の匂いに私のお腹も刺激を受け、お腹が空いていたことを思い出した。
こんな時は、慣れてる人に頼るのが一番!
「すべてお任せします!」と元気に返事をした。

イワシの酢漬け、ハモンセラーノ、パエリア、イベリコ豚のソーセージなどなど。
次々に出てくる美味しい料理と美味しいワイン、さらに部長の素敵な笑顔と楽しい会話で、すっかり満たされた。
お酒の力を借りれば、「賢二さん」という呼び方も迷いは無くなる。
途中、部長から熱を含んだ視線を投げられたような気もするし、
私も、酔いに任せてそれなりの視線を返した気もする。

何より、こんな舞い上がった状態で、私自身の部長への気持ちなど整理できるわけがない。
とにかく今を楽しんで、考えることは明日に延ばそう。
酔った頭でそう結論づけた。

2人でおしゃべりしたり、1人で妄想したり、忙しくしていたら、
気付くと、もうすぐ10時になろうとしていた。
そろそろ出る頃合いだ。
半分払うと言ったけど、部長にすらりとかわされ、素直にごちそうになった。
「ごちそうさまでした。ほんとうに美味しかったです。
素敵なお店ですね。」
「どういたしまして。
洋子さんは、美味しそうに食べてくれるから、こっちも嬉しいよ。」
「次は私が払いますから。」
「ははは、うん、楽しみにしてるよ。」
社交辞令かもしれないけれど、次の約束ができたようで嬉しい。

どうにも酔ってて、ふわふわしてるみたいだ。
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