スパダリ部長に愛されてます
古谷洋子(ふるやようこ)27歳。
大手不動産会社で派遣社員として働きながら、
週に1,2日、ヨガインストラクターとしても働いている。

「ヨーコ先生、ありがとうございました!」
「また来週もよろしくお願いします!」
「肩がすっきりかるい~」
「また来てくださいね」
慌ただしくロッカールームに消えていく生徒さんと短い会話を繰り返す。
全員が教室を出たところで、ぐるりと見まわして忘れ物の確認。
軽く掃除をして、講師用の控室に戻る。

普段なら、このまま帰るのだが、
今日の午後は、私にとって特別な個人レッスンがある。
私をヨガの世界に導いてくれたケイコ先生の生徒さんを急遽教えることになった。
個人的な練習も兼ねて、友人や親にパーソナルレッスンをしたことはあるけれど、
スタジオ内でパーソナルレッスンをするのははじめてだ。
パーソナルレッスンは、もっと経験の長い先生にしか許可されていないが、
今日はケイコ先生の緊急代理。
昨日、ケイコ先生のお母様が脳梗塞で倒れ、昨夜私に連絡があり、急遽決まった。
朝の電話では、手術も無事に成功したとのことで、まずはひと安心。
ただ、最低でも1ヶ月は入院の必要があるから、ケイコ先生のレッスンは今後調整が必要だ。
来週以降の予定はどうなるかわからないけど、準備はしておこう。

タブレットに映るカルテの生徒さんの名前を確認する。

新山賢二(にいやまけんじ)
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