Restart~あなたが好きだから~
『もしもし。今、何してるの?』


「家で晩御飯食べてる。」


『1人で?』


「そうだけど。」


前置きもなく、話し掛けて来た相手は、七瀬の返事を聞くと、盛大にため息を吐いた。


「何の用?」


そのため息を聞いて、七瀬の口調はつい、つっけんどんになる。


『あんた、明後日はわかってるわよね?』


「えっ?」


『やっぱり忘れてる、お爺ちゃんの法事よ。』


「ああ、そっか・・・。」


『全くあんなに可愛がってもらったのに、あんたって子は・・・。』


「ごめん。忙しくて、つい・・・。」


バツ悪げに言い訳する七瀬に


『仕事、仕事も結構だけど、そろそろ別のことにも目を向けてもらわないと、こっちも困っちゃうのよね。』


トゲのある口調の言葉が返って来て


(また、その話か・・・。)


内心うんざりしながら黙っていると


『それで、明日は何時頃帰って来るの?』


と聞かれた。


「えっ?確か11時スタ-トだよね。当日、直接行くよ。」


七瀬が答えると


『あんたねぇ、滅多に帰って来ないんだから、こんな時くらい、早めに帰って来て、親に顔を見せてやろうという気持ちはないの?それに話したいこともあるんだから・・・。』


途端にまくし立てられ


(その「話したいことがある」が結局、目的なんでしょ・・・。)


いよいようんざり度は増したが、さりとて「帰りたくない」などと言えば、火に油を注ぐことになるのは明々白々なので、仕方なく明日の夜には帰ると返事をした。もっと早く帰って来られないのかと、尚も粘られたが、仕事が忙しくて、明日も出勤しなきゃならないんだと、なんとか押し切った。


『じゃ、待ってるからね。』


10分程の会話がようやく終わり、相手の母律子(りつこ)は電話を切った。


ため息をつきながら、スマホを置いた七瀬。


(もう2年になるのか・・・。)


ふとそんな思いがよぎる。七瀬は祖父が大好きだった。女の子の孫が自分だけだったこともあるのだろうが、本当に可愛がってくれた。実家からは足が遠のいている七瀬も、病を得て入院してしまった祖父の見舞いには、何度も通ったし、その訃報を耳にした時には号泣したものだ。


敬愛する祖父の法事が面倒なはずがない。だが、その為に実家に帰り、母親から耳タコの話をされ、また翌日には親戚連中に余計なことを詮索されたり、言われたりするのが容易に想像がつき、七瀬はそれがただただ憂鬱だったのだ。


(それに、たぶんアイツとも会うことになるだろうし・・・。)
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