Restart~あなたが好きだから~
「気にするな、それより明日は有休でいいからな。」


「えっ?」


「側に付いていてやりたいんだろう。だったらそうしてあげろ。」


「副社長・・・。」


「じゃ。」


「ありがとうございます。」


背を向けて歩き出した圭吾と愛奈の後ろ姿に、七瀬はまた一礼した。


()けてたのか、俺たちのこと?」


自分たちを見送っている七瀬の視線を背中に感じながら、圭吾は横の愛奈に尋ねる。


「ごめんなさい。でも・・・。」


「それにしても、なんで、こんなに次々といろいろと起こるんだろうな?」


「先輩・・・。」


「お陰でまた七瀬を手に入れ損なった。」


「・・・。」


「さっきの『茶番』っていう君の言葉、正直堪えたよ。」


「えっ?」


「きっと神様もそう思ったから、邪魔したんだろうな。だが、こんな邪魔の仕方をしなくてもいいだろう。いくらなんでも意地悪と言うか・・・残酷過ぎる。」


最後の言葉を吐き捨てるように言うと、圭吾は足を速めた。


そんな2人の姿が見えなくなり、七瀬が病室に戻ると


「やっぱり、弥生さんが、寂しくて大和を迎えに来たのかしらね・・・。」


涙声の礼子の言葉が聞こえて来て、七瀬は思わず固まる。


「縁起でもないことを言うもんじゃない!」


慌てて強い口調で窘めて来た夫に


「ごめんなさい、つい・・・。」


我に返って、謝る妻の肩を、父親がそっと抱き寄せる。その光景を後ろで見ながら


(大和も寂しかったんだよね。そんなの当たり前で、気持ちもわからないわけじゃないけど、でもいくらなんでも不注意過ぎるよ・・・。)


七瀬は唇を噛み締める。大和が事故に遭う直前、自分に思いを馳せていたことなど、彼女は知る由もなかったし、また想像すら出来ないことだった。
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