Restart~あなたが好きだから~
「七瀬の方はだいたい片付いたか?」


「はい。」


「さすがだな。」


「副社長は?」


「俺ももう少しだ。」


「何かお手伝いさせていただくことはありますか?」


「大丈夫だ。」


ここで圭吾はカップを口に運んだ。


「やっぱり、コーヒ-も七瀬が煎れてくれた方が旨いな。」


「そんなわけありません、インスタントですよ。」


「俺がそう感じるんだから、仕方ないだろう。」


そう言って笑った圭吾だったが、すぐに表情を改めると


「七瀬。」


と呼び掛けると


「昨日は改めて、お前の存在の大きさを思い知らされたよ。」


としみじみとした口調で言い出した。


「お前が普段、いかに俺の前の壁になって様々な案件や業務を選りすぐって、俺に上げてくれてるか。そのお陰で、いかに俺の仕事がやり易くなっているか、改めて身に沁みてわかったよ。」


「副社長・・・。」


面と向かって褒められて、七瀬は困ったような表情を浮かべる。


「七瀬ならやれる、そう思って、俺はお前を秘書に引っ張った。それからわずか1年足らずで、今のお前は俺の期待を遥かに超えたバディになってくれた。」


自分を真っ直ぐに見つめて言う圭吾に


「ありがとうございます。」


七瀬は素直に礼を言った。


「城之内さんの仕事ぶりを見て、私には絶対無理だと思ってたのに、それ以上のことを求められるなんて正直、無茶苦茶なことをおっしゃるなって思いました。営業に戻して欲しい、ううん、そんな我が儘が通るはずもないから、退職しようか、そんなことまで考えました。でも、その一方で、期待していただいたことはやっぱり嬉しくて・・・とにかくやれる限り頑張ってみようって思い直して、自分で言うのもなんですが、努力して来たつもりです。だから・・・今の副社長のお言葉は本当に嬉しいです。」


「そうか・・・。」


少しはにかんだ表情を浮かべている七瀬を、圭吾は少し見つめていたが


「今日はもう上がってくれ。病院に行かなくちゃならんだろ。」


七瀬に言った。


「はい。それでは片付けてから、お先に失礼させていただきます」


そう言って立ち上がり、部屋を出ようする七瀬を


「七瀬。」


と圭吾は呼び止めた。
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