Restart~あなたが好きだから~
部屋に入ると、椅子に腰かけ、力ない表情でこちらを見ている大和と目が合う。


(大和・・・。)


この前会った時とは、別人のように憔悴している幼なじみの姿に、七瀬が一瞬息を呑んでいると


「今日はありがとう。」


そう言いながら、立ち上がった大和は弱々しい笑顔を浮かべたが、その笑顔はすぐに消えてしまう。


「久しぶりに入ったけど、変わり映えしないねぇ、この部屋。」


そんな大和に様子に気が付かない風で、七瀬は言うと


「そんなことないだろ?好きだったアイドルのポスタ-やグッズが昔は飾ってあっただろう。」


反論してくる大和。


「さすがにあの子はもう卒業したんだ?」


「当たり前だろ、何年前の話だと思ってるんだよ。」


こんなことを言い合って、雰囲気が少しほぐれたかなと七瀬は思ったが、ふと飾られていた大和と弥生の仲睦まじいツーショット写真が目に入り、思わず表情が曇る。その七瀬の変化の理由に大和も気付き、雰囲気はあっという間に重くなってしまう。


(これじゃ・・・。)


次の瞬間、七瀬は


「出掛けるよ、大和。」


と口にしていた。


「えっ?」


「こんないい天気の週末に、なんで部屋にくすぶってるの?久しぶりに可愛い幼なじみが、こうして訪ねて来てあげたんだから、ドライブくらい付き合ってくれても、バチはあたらないでしょ?」


「でも、七瀬・・・。」


「じゃ、10分後に出発するよ。急いで着替えて。」


有無も言わさずに告げる七瀬の顔を一瞬眺めた大和が


「わかったよ。じゃ、とりあえず着替え中は外へ出ててくれ。」


諦めたように答えると


「えっ、なにを今更恥ずかしがってるの?昔は一緒にお風呂入った仲じゃない?」


尚も揶揄うように言って来る七瀬。


「いい加減にしろ!」


一瞬、顔を見合わせて、ニヤッと笑い合うと


「とにかく下で待ってろ。」


大和が言う。


「は~い。」


軽やかな足取りで出て行く七瀬の後ろ姿を見ながら


(全く、相変わらず強引だな・・・。)


苦笑いを浮かべた後、大和は着換え始める。
< 58 / 213 >

この作品をシェア

pagetop