Restart~あなたが好きだから~
「『恋愛に興味ない』という看板、下ろすことになるかもしれないし。」


「えっ?」


「このところ、大和とちょこちょこ連絡とってて。それで、実は明日会うんだよ。」


「そうなんだ。」


「話を聞いてくれないかって、向こうから言って来てさ。あいつもなかなか現実を受け入れられなくて、前に進み出せなくて苦しんでる。そんな時に、大和が私の存在に気付くっていうか、思い出してくれたんなら、正直嬉しい。」


「七瀬・・・。」


「大和の失恋に付けこむのは気が引けてたんだけど、でも沙耶が言う通り、好きな人の失恋はやっぱり思いを寄せている側からすれば間違いなくチャンスだもんね。傷心の時に優しくしてくれたり、傍にいてくれた人に対して、人は好意を抱きやすいはずだよね。だから明日は滅茶苦茶下心満々で大和に会うつもりだから。」


そう言って、ようやく笑顔を見せた七瀬に


「よろしいんじゃないですか。七瀬、ファイト!」


沙耶もそう言って笑顔を返した。


ランチを終え、カフェを出た2人は、肩の凝らないコメディタッチのラブスト-リ-と評判の作品を見に映画館へ。


「彼氏と見なくてよかったの?」


「誘ったんだけど、好みじゃないって断られた。」


「そうなんだ。」


そんな会話を交わしながら入った映画館で見た作品は、確かに笑いあり、でもキュンと切なく涙を誘うシーンもあって、なかなかの秀作だった。


「面白かったね。」


「主演の子が可愛かった。あの子じゃなかったら、成り立たなかった作品だったかも。」


「そうだねぇ。」


なんて言い合いながら、映画館を後にした2人。


「じゃ、大切なデートを控えてるんじゃ、今日はこれで解散にする?」


とお伺いを立てる沙耶に


「なに言ってるの?デートも大切だけど、せっかく沙耶と一緒に映画を見て、もっといろいろ感想を語り合わないなんてありえないでしょ。それに、明日の作戦立案にも協力して欲しいし。」


七瀬は首を横に振ってみせる。


「なるほど、了解です!」


沙耶がおどけながら答えると、顔を見合わせて2人は笑い合って歩き出す。どの店に入ろうかと、明るく沙耶に言った七瀬が、次の瞬間、ハッと足を止める。


「どうしたの?」


沙耶が彼女の顔を見るが、七瀬は前方を見つめたまま、固まっている。


「七瀬。」


沙耶が声を励ますと


「ごめん沙耶。ちょっとここで待ってて。」


と言うや、七瀬はいきなり駆け出した。
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