成瀬課長はヒミツにしたい
「成瀬くん。このビラには明らかに悪意がある。社内を分断しようとしている、悪意がね。だからこそ、フロアに戻って事実を説明する必要があるんじゃないかな」

 常務はチラッと真理子の方に顔を向ける。

「水木くんのことは、君が守ってあげなさい。大切なパートナーなんだろう?」

「え?」

 真理子は思わず声を出し、成瀬の顔を見上げた。

 成瀬は静かに真理子を見つめている。

「……わかりました」

 しばらくして、成瀬は不安を押し殺すような声でうなずいた。


 真理子たち四人は、廊下まで叫び声やざわめきが聞こえるフロアに向かって、ゆっくりと歩きだした。

 最初に成瀬が扉を押し開け、中へと一歩入る。

 その途端、フロアにいた社員全員がこちらを振り返った。

 それぞれの手には、あのビラが揺れている。

 真理子は、みんなの目線と手元のビラに写る自分の姿を見て、一瞬足がすくんで動けなくなった。
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