成瀬課長はヒミツにしたい
「グーー」

 ほっとしたのか、真理子のお腹が、突然大きな音を鳴らす。

「おい……」

 成瀬は乃菜と顔を見合わせると、あははと声を上げて笑い出した。


「す、すみません……。あまりにいい匂いで」

 顔を真っ赤にしてお腹を押さえる真理子に、乃菜が笑顔で飛びついた。

「とうたんがね、きっと、まりこちゃんがくるからって。まりこちゃんのぶんもつくったんだよ」

「え?! ほんとう?」

 真理子は乃菜を抱えたまま、キッチンに入る。


 真っ赤になったオーブンの中には、ジュウジュウと音を立てた出来立てのドリアが、三つ並んで入っていた。


「嬉しい……。美味しそう」

 真理子は成瀬の顔を見上げる。

「まぁ、あんなことがあった後だしな。お前なら来るだろうと思って」

 成瀬は頭をかきながらそう言うと、照れた顔を隠すように、真理子と乃菜の頬をキュッと掴んだ。

「二人のお腹の虫が怒りだす前に、さぁ食べるぞ」
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