成瀬課長はヒミツにしたい
「え?! 社長?!」

 真理子は驚いた声を上げると、慌ててフライパンを置きスイッチを切る。

 この部屋で社長に会うのは初めてだ。

 どんな顔をして出迎えればいいのか、真理子は戸惑ったまま玄関に向かった。


「パパおかえりなさい。きょうはね、ハンバーグだよ」

 乃菜は溢れんばかりの笑顔で、社長に抱きついている。

 初めて見る、乃菜と父親の顔をした社長の姿に、真理子はおずおずと近寄った。


「真理子ちゃん」

 顔を上げた社長が、真理子に笑顔を見せる。

「あの、えっと。おかえりなさい……」

 真理子は頬を赤らめながら声を出した。

「ただいま。……やっぱり、いいもんだね」

 社長はそうつぶやくと、不思議そうな顔をする真理子に優しく微笑んだ。

 しばらく見つめ合う二人を、乃菜が嬉しそうに見上げている。


「ご、ご飯にしましょうか……?」

 真理子は社長が醸し出す雰囲気に戸惑い、慌てて目線を逸らした。
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