成瀬課長はヒミツにしたい
「常務は社内の動きに、注視してもらえますか? この事はしばらく社内には隠しておきたい。特に、専務には知られたくない」

「うむ。そちらは任せておくれ」

「では……」

 打ち合わせは手短に終了し、それぞれが立ち上がった。


 真理子は急いで社長のデスクに向かう。

 自分のデスクの三倍はあろうかという、重みのある机にいわゆる社長椅子。

 真理子は一瞬ひるんで、座って良いものか躊躇(ためら)ってしまった。


「そんなに緊張しないでよ。パソコンの中身は一緒でしょ」

 すると真理子の動揺を感じ取ったのか、社長がウインクしながら茶目っ気たっぷりにほほ笑んだ。

 そして真理子の両肩を支えるように、椅子に座らせる。


「な、なんだか、急に偉くなった気分です……」

「どうぞ、好きなだけ自由に使って。真理子ちゃんなら大歓迎」

 照れる真理子の肩を抱いたまま、社長は笑い声をあげマウスを操作した。
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