成瀬課長はヒミツにしたい
「それが、長い時間あそこで過ごしてきた柊馬さんが、守らなきゃいけない約束なんじゃないんですか?!」

 瞳を潤ませながら肩を震わせる真理子を、成瀬は驚いたように見つめている。

「真理子……?」

 成瀬の長い指が、真理子の頬に触れそうになった時、デスクの内線が大きな音を立てて鳴った。

 二人はビクッとして電話を振り返る。


「常務からだ……」

 番号を見てそう言うと、成瀬が静かに受話器を上げる。

 すると、成瀬の顔が次第に緊張していくのがわかった。

 真理子は慌てて駆け寄ると、電話口に顔を寄せた。


「……うちの情報漏洩の件が、匿名掲示板に書き込まれた?」

 真理子は成瀬の声に、叫び出しそうになる口元を慌てて両手で覆う。


 ――どういう事?! 新聞社の次は、匿名掲示板?!


 真理子は思わずその場に立ち尽くしていた。
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