成瀬課長はヒミツにしたい
「前々から、情報漏洩を防ぐ目的で、個人情報のデータ抽出にはログをつけるようにしています。誰かがリストを作ったなら、そこから追えるかも知れないと思って……」

 真理子は手短にそう言うと、パソコンを操作する。

 成瀬と共に画面を食い入るように見つめながら、ログを辿っていた真理子の手が、あるところでぴたりと止まった。


 ダイレクトメールの発送に関わる部署の名前に交じって、卓也の名前を見つけたのだ。

 ふと真理子の脳裏に、卓也のよそよそしい様子が浮かぶ。

「佐伯くんが、社長案件の顧客分析に関わってるって聞きましたけど……」

「あぁ、それは俺も関わってる。だが、もらったデータは、顧客の年齢や性別、居住地域だけで、個人が特定できるものではないぞ……」

 成瀬はそう言うと、真理子の横から手を伸ばし、マウスをクリックする。

 成瀬が表示したデータを見て、真理子は息をのんだ。


 ――違う……!


 ログに表示されている、卓也がデータ抽出した内容。

 それは、完全に個人が特定できる情報のものだった。
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