成瀬課長はヒミツにしたい
 その時、バタバタという足音が聞こえ、真理子はビクッと顔を上げる。

 叩きつけるようなノック音と共に開いた扉から、にやついた顔が覗いた。


「おやおや、家政婦のお二人さんじゃないか」

 専務は目を細めながら楽しそうに笑うと、部屋の中に入ってくる。

 その後ろには、同じくにやついた顔の橋本の姿が見えた。


「橋本……?! なぜここに?」

 小さくつぶやく成瀬の声に、橋本は「ふん」と鼻で笑う。

「そりゃあこっちのセリフだね。成瀬さんよぉ。大変なことをしでかした社長の顔を拝みに来たんだ。あんたにゃ用はないぜ」

 橋本は、吐き捨てるようにそう言うと、顔を背けた。


「まぁまぁ。橋本くん。落ち着きたまえ」

 専務はそう言いながら、ソファにドカッと腰を下ろした。

「サワイライトは今や情報漏洩で一躍話題の企業。社長に今後の対応を相談しようかと思ってね」


 ――情報漏洩で話題?!


 真理子は驚いて成瀬と顔を見合わせた。
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