成瀬課長はヒミツにしたい
「これはこれは。専務、お二人さんは、まだご存じないみたいですよ」

 楽しそうに肩を揺らす橋本から目線を逸らすと、成瀬が慌ててデスクのパソコンでインターネットを開く。

 トップニュースに表示されていたのは、サワイライトの顧客情報漏洩疑いの記事だった。


「そんな……。こんなに早く記事に?!」

 真理子は眉を下げると、不安でたまらず成瀬の顔を見上げる。


「うちみたいな中小企業の記事がトップに載るとは、世の中平和なもんですねぇ、専務」

 橋本は、これ見よがしに手を広げて嘆くふりをする。


「これこれ、橋本くん。情報漏洩は大問題。口を慎みたまえ」

 それをたしなめる専務の口元は、まるで笑いを(こら)えるかのようだ。

 成瀬は「くそっ」と小さく拳を机に打ち付けると、橋本の顔を見た。


「お前がマスコミにリークしたのか……」

 成瀬の凄みのある声に、橋本は専務と顔を見合わせると、再び楽しそうに肩を揺らす。
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