成瀬課長はヒミツにしたい
「君。外にいるマスコミの方にもそう伝えてくれたまえ。近日中に、必ず会見を開くとね」

「は、はい……」

 男性社員は小さく答えると、フロアを駆けだしていく。


「専務」

 成瀬が真理子の肩を引き、専務の前へと歩み出た。

「社長の判断を待つべきです。実際、情報が漏洩したかもわかっていない」

 成瀬の声に、専務は「ハハハ」と声を上げると、橋本と顔を見合わせて笑い出した。


「成瀬くん。何を寝ぼけたことを言っとるんだ。ここまで大事(おおごと)になっているんだよ? 事実は別として、社長の責任は重いだろう?」

 専務の瞳の奥が鈍く光っている。

「つまり……」

 成瀬は静かに専務の顔を睨みつけた。

「つまり、会見で社長に責任を取らせるつもりだ、という事ですね?」

 成瀬の言葉に、専務は何も答えずに鼻で笑っている。


「そんな……」

 思わず真理子の口から声が漏れた。


 ――これじゃあ、事実はうやむやのまま、社長だけが辞めさせられる……。
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