成瀬課長はヒミツにしたい
 社長の予想外の発言に、会場内のざわつきは一向に収まらない。

 専務は、隣で固まっている橋本を振り返った。


「橋本! どういう事だ!」

 橋本は狼狽しながら、何度も首を横に振る。

「わ、私にも、何がなんだか……。ただ……」

「ただ?!」

「さっき、名簿業者から物凄い剣幕で連絡が入って……。『イカサマのデータを渡しやがって、金を返すまで許さないぞ』って……凄まれて」

 橋本はよほど怖い思いをしたのか、話しながら涙目になっている。


「なに?!」

 専務は大きな声を出すと、はっとして正面を向く。

 会場の一番前では、社長が鋭い視線を専務に向けていた。

「ま、まさか……」

 専務は、わなわなと唇を震えさせる。


「どういう事か、ご説明ください」

「つまり、掲示板に書き込まれた内容は、デマだったという事ですか?」

 ざわつく会場では、マスコミの人々から矢継ぎ早に質問がされる。

 社長は軽くうなずくと、静かにマイクを手に取った。
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