成瀬課長はヒミツにしたい

本当のこと

 社長室に、ひどくやつれた様子の卓也が現れた時、真理子は思わず卓也の手を取ると、そのまま中へと引き入れた。

「卓也くん……」

 心配そうに眉をひそめる真理子に、卓也はうつむいたまま小さく笑う。

「だから言ったじゃないですか。あんまり人の事、信じすぎると、いつか酷い目に合いますよって……」

「でも、来てくれた」

 真理子はそう言うと、目を潤ませる。

 卓也は、ソファに腰かける成瀬に顔を向けると、深々と頭を下げた。


「話を聞かせてもらおうか」

 成瀬の低い声が室内に響いた。

 卓也はこくんとうなずくと、成瀬の前に腰かける。

 真理子も緊張した顔つきで、成瀬の隣に座った。


「真理子さんなら、気がついてくれると思ってました。俺が、隠したメッセージに……」

 卓也は小さな声で話しだす。

「メッセージ?」

 真理子は、何のことを言っているのかわからず、首を傾げた。
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