成瀬課長はヒミツにしたい
 真理子たちが会社に戻ったのは、夕方近くだった。

 フロアにいた社員全員が立ち上がり、社長を出迎える。


 社長はゆっくりとフロアの真ん中に立つと、ぐるりと社内を見回した。

「皆さんも会見を見てくださったので、状況はお分かりだと思います。正直、今回の件はショックを受けた方もいらっしゃるでしょう」

 静まり返ったフロアに社長の澄んだ声が響き、誰もがその言葉を聞き逃すまいと耳をすませていた。


「専務や橋本さんの行動は、到底許されるものではない。でも、彼らが今回の行動に出るほどまで、不満を募らせてしまったことは、僕に責任があります。それは今この場で、社員の皆さんにもお詫びしたい」

 社長はそう言うと、静かに頭を下げる。

 そして顔を上げると、力強く拳を握った。


「だからこそ、今後は顧客の信頼を回復できるよう、全力で業務にあたって行きましょう」

 社長の力強い声に、フロアではいつまでも拍手が鳴りやまなかった。


 ――やっぱり社長の言葉ってすごいんだ。
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