成瀬課長はヒミツにしたい
 そう言った社長に、真理子は小さく首を横に振った。

「私だけの力じゃありません。本社も現場のスタッフも、それぞれの会社を想う気持ちが、この結果につながっただけです。私たちがそう思える会社にしてくれたのは、社長ですよ」

 ぱっと笑顔を向けながら言う真理子の姿に、社長は驚いたように目を丸くする。

 そして真理子の顔をじっと見つめた後、小さく「決めた」とつぶやいた。

 社長の声に、真理子は首を傾げる。

「なんでもない!」

 おどけながらそう言う社長の顔は、いつもの明るい顔に戻っていた。


 コンコンと再び扉をノックをする音が響き、真理子は慌てて社長の側から離れる。

 ゆっくりと開いた扉から、常務が穏やかな顔を覗かせた。

「社長。そろそろ戻ろうか。きっと社員のみんなが、帰りを待ってるからね」

 社長は一旦真理子を振り向くと、くすっと肩をすくめるように笑う。

 真理子もほほ笑みを浮かべると、小さくうなずいた。
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