成瀬課長はヒミツにしたい
 みんながまだ寝静まっている朝早く、乃菜はこっそりとベッドを抜け出した。

 リビングの扉をそっと押し開けて中を覗き込むと、窓辺からは朝日が差し込んでいた。

 その光のすじを辿(たど)りながら、ツリーの前に目線を向けた時、乃菜ははっと息をのむ。


 クリスマスツリーの前には、赤い包装紙に包まれたプレゼントが置いてあった。

 乃菜は急いでリビングに駆け入ると、プレゼントの前にしゃがみ込む。


「サンタさん……きた……」


 そしてすぐに、プレゼントのグリーンのリボンに挟んで置かれている、ポストカードに目を奪われた。

 乃菜は信じられない気持ちのまま、ポストカードを手に取る。


「のなの、おてがみ……持ってる……?」


 何度も目をぱちくりさせながら、ポストカードを食い入るように見つめた。


「……すごい」


 そしてもう一度、ゆっくりとかみしめるように声を出した。


 乃菜は立ち上がると、窓辺に走って行き、空に向かってカードを掲げた。


「サンタさん! ありがとうー」


 乃菜は大きな声で叫ぶと、カードを胸にぎゅっと抱えたまま、リビングの中を跳ね回る。


 そっと開いた扉の隙間からは、その様子を幸せそうに見つめる三人の顔があった。



~番外編~ それぞれのメリークリスマス  おしまい
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