成瀬課長はヒミツにしたい
 今日の午前中に社長が私用で遅れたのは、この準備のためだったのかと、真理子は胸がいっぱいになる思いだった。

「まりこちゃん! のな、がんばったんだよ」

 乃菜は握った両手をぶんぶんと振りながら、笑顔で真理子を見上げている。

 真理子はしゃがみ込むと、乃菜をぎゅっと抱きしめた。


「乃菜ちゃん、本当にありがとう。こんな素敵なお祝いをしてもらったのは、初めてだよ……」

 そう言いながら、真理子の声はうわずってくる。

「まりこちゃん、ないてるの?」

 乃菜が心配そうに顔を覗き込んだ。

 真理子は大きく首を横に振る。

「悲しくて泣いてるんじゃないよ。嬉しいの。すごくすごく、嬉しいんだよ」

 真理子がにっこりとほほ笑むと、乃菜は安心したように大きくうなずいた。


「のなね、まりこちゃんには、いつもわらっててほしいの」

 乃菜はそう言うと、画用紙に描いた絵を真理子に手渡した。

「これは……?」

 真理子は絵を見て、はっと乃菜と社長の顔を見上げる。

 二人は同じ顔で、優しく笑っていた。
< 279 / 413 >

この作品をシェア

pagetop