成瀬課長はヒミツにしたい
「そういえば、乃菜が喜んでるよ。真理子ちゃんの笑顔が戻ったって」

 社長は真理子にウインクすると、顎に手を当てながら成瀬の顔を横目でチラッと見る。

「それと、もう一つ言ってたなぁ。柊馬がニヤついてるって……」

 社長のいじわるな声に、成瀬はぎょっとした顔をした。

「おい! 勝手なこと言うな」

 成瀬は眉間に皺を寄せると、最大限に不機嫌な声を出す。

 真理子はそんな二人のやり取りを、微笑ましく見ていた。


 それぞれの想いが絡んだ時を経て、三人の関係性は今まで以上に絆が深まっていた。

 そして乃菜も、真理子と成瀬の事を祝福してくれている。


 最近の社長は、大きな商談がまとまったことでさらに多忙を極めており、真理子は成瀬と共に仕事と家政婦のフル回転状態だ。

 成瀬との二人きりの時間は限られるが、それでもお互い心は満たされていた。


「それじゃあ、私は席に戻りますね」

 真理子は二人に声をかけると、自席のある隣の部屋へと戻った。
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