成瀬課長はヒミツにしたい
 真理子の誕生日の前日、明彦は思い切って乃菜に話しかけた。

 まだ幼い乃菜と、面と向かって話しをするなんて、今まで一度もしたことがない。

 だが、たとえ子供でも、きちんと話しあうべきだと思ったのだ。


 秘書になってからというもの、真理子の様子は明らかに変わっていた。

 張り切って仕事に取り組み、時には楽しそうに笑顔を見せたりしていたが、明彦から見ればそれは完全にカラ元気だった。

 そして柊馬が急に家政婦に来なくなったことも合わせると、二人の間に何かがあったことは明らかだ。

 柊馬の事だ。きっと真理子に、線を引くようなことを言ったのだろう。


 ――やっぱり、難しいのかも知れないな……。


 そんな想いが、明彦の中にふつふつと生まれていた。


「真理子ちゃんに、ママになって欲しいって、言ってたことなんだけど……」

 明彦は、乃菜がどんな反応をするのか、全く予想がつかないまま話し出した。

「のな、しってたの」

 しばらくして、乃菜はうつむいたまま小さく声を出す。
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