成瀬課長はヒミツにしたい
「ねえ、乃菜。乃菜は、笑ってる真理子ちゃんが好きなんだよね」

「うん……」

「笑ってる真理子ちゃんと一緒にいたいんだよね」

「うん」

「じゃあ、真理子ちゃんを応援してあげようよ」

「おうえん?」

 首を傾げる乃菜に、明彦はそっと耳打ちした。


 それから乃菜は、黙々と机に向かって絵を描きだした。

 完成した絵を見せる乃菜の笑顔は、佳菜にそっくりだった。



 明彦は、ふっと思い出したようにほほ笑むと、気持ちを切り替えるように勢いよく柊馬を振り返る。

「月末の役員会議は、柊馬も出席してよね。サワイの今後に関することだから」

「今後……? わかった。じゃあ、俺も戻るぞ」

 柊馬は軽く手を上げると、くるりと後ろを向く。


「それと……」

 明彦は思い出したように、柊馬の背中に声をかけた。

「柊馬のサンタ、乃菜にバレてたからね」

 ぎょっとする柊馬に、明彦は頭の上で片手をひらひらと振った。


「目が一緒だったんだって……」

「目?!」


 ――真理子ちゃんを、見つめる目がね……。


 明彦は最後の言葉は声にせず、一人でそっとのみこんだ。
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