成瀬課長はヒミツにしたい
「そうそう! イベントもがんばろうね」

「私たちも力になるからさ」

 みんなは付け加えるようにそう言うと、魂が抜けたように立ち尽くす真理子の周りではしゃいでいる。

 室内から「ウォッホン」という部長の咳払いが聞こえた。


「やば! じゃあ、戻るね」

 みんなは次々に真理子の肩をポンポン叩き、そそくさと秘書課へと入って行った。

 取り残された真理子は、肩を押された勢いのまま、ふらふらと壁際によろめく。

 なんてこった。

 まさか乃菜が、堂々と成瀬との関係を、暴露するとは思ってもいなかった。


「ちょっと……これから、どうすんのよー!」

 途方に暮れる真理子の声は、静かな廊下にこだましていた。



 あはは、と楽しそうな成瀬の声が夜の街に響く。

「笑い事じゃないですよ! もうあの様子じゃ、全社員にバレるのは時間の問題ですからね!」

 真理子はぷりぷりと頬を膨らませた。

「別にいいんじゃないか? バレたって」

 成瀬は特に気にするでもなく、飄々(ひょうひょう)としている。
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