成瀬課長はヒミツにしたい

昔の秘密

 次の日、真理子は常務室に向かっていた。

 扉の前で一旦深呼吸をすると、昨夜電車の中で聞いた成瀬の話を思い出す。


「工場の件で一つ案がある。明日常務に打ち合わせの時間をもらってるから、真理子も参加してくれないか?」

 成瀬のいつになく固い声に、真理子は小さくうなずいた。


 案というのは、真理子たちのもう一つの課題、工場の生産体制を見直すと言っていた件だろう。

 イベントについては順調に話が進んでいるが、工場の件については今まで成瀬から話を聞いてはいなかった。

 仮にイベントで社内が一つになったとしても、現実的に電飾玩具を製造できなければ、撤退以外の選択肢はなくなってしまう。

 社長に判断してもらうためにも、工場の問題を解決する策を見つけることは必須条件だ。


「案って?」

 真理子は小さく聞き返した。

「今も電飾玩具の製造を、委託している取引先が一社だけある。そこに他の玩具の製造も、委託する案だ」

「え? 製造って、自社工場だけじゃなかったんですか?」
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