成瀬課長はヒミツにしたい
 あははと成瀬と卓也の笑い声が、遠くで聞こえた。

 真理子は振り向くと、楽しそうに話をする二人の姿に目を細める。

 すると、卓也の母親がそっと真理子の側に寄った。


「真理子さん、ですよね?」

 落ち着いた声に、真理子は慌てて背筋を伸ばした。

「あ、はい。先ほどはお母様に、ちゃんとご挨拶せず申し訳ありません」

 真理子が小さく頭を下げると、母親は柔らかい笑顔で、何度も首を横に振る。


「私ね、いつかお会いしたいと思ってたんです。卓也からしょっちゅう聞かされてましたから。素敵な先輩だって。うちが作った電飾玩具を、本当に大切にしてくれている方なんだって」

 真理子は照れたように首をすくめた。

 卓也は母親似なのだろう。

 ちょっとした会話の隙間に見せる人懐っこい笑顔が、とてもよく似ていた。


「サワイライトを辞めると言い出した時、卓也は最後まで理由を教えてくれませんでした」

 母親は遠くで笑っている卓也を見つめた後、真理子に向き直る。
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