成瀬課長はヒミツにしたい
「は、はひっ……」

 夏美は盛大に噛みながら答えると、真っ赤な顔をさらに赤くして背筋をぴんと伸ばす。

 明彦は再び大きな声で笑うと、冷や汗をかきながら秘書室に戻って行く小宮山と、ロボットのようにぎこちなく歩く夏美の後姿を見送った。


 こんなに大声を出して笑ったのは、いつぶりだろう。


 ――今まで、見たことがないタイプの子だな。


 笑いすぎた目尻の涙を指で拭いながら、ふと顔を上げると、社長室の扉の隙間から真理子が顔を覗かせている。

 いつからこの様子を見ていたのだろう。

 真理子はにんまりと口元を引き上げると、扉の隙間からにゅっと手を出し、親指をぐっと上に向けた。

 明彦はまた、大声を出して笑い出す。


「さすが、我が社自慢の人事課長と、できる社長秘書が選んだだけのことはあるね」

「いい子ですよ」

 真理子は明彦の前に来ると、にっこりとほほ笑んだ。


「うん。そうだね。それは一発で伝わったよ」

「ですよね!」

 腰に手を当ててふんぞり返る真理子に、明彦は嬉しそうに肩をすくめた。
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