成瀬課長はヒミツにしたい
 夏美が第二秘書に来てからというもの、社長室は毎日大騒ぎだった。

「ひえー!」

「ぎゃー!」

 いつもどこかで夏美の悲鳴が聞こえ、それをなだめる小宮山と真理子の声が追いかける。


 夏美は俗にいう“ドジっ子”だったが、持ち前の素直さと一生懸命さで、自然と周りを和ませた。

 小宮山とも合うようで、親子漫才のようにいいコンビネーションを見せている。

 いつも笑いの絶えない中、真理子との引継ぎはなんとか完了した。


 『これで安心して、社長を置いていけます』


 そして真理子は、満足そうな笑みと明彦への言葉を残して、最終出勤日を終えた。



「水木さんの出産予定日って、もうすぐですよね?」

 真理子が産休に入ってからしばらく経ったある日、明彦が秘書室に顔を出すと、小宮山が手帳をめくりながら声を出す。

「うん。でも昨日柊馬に聞いたら、少し予定日より遅れそうって言ってたんだよね」

「初産ですからねぇ。社長と乃菜ちゃんも、病院まで行くんですか?」

「そのつもり……」

 明彦はそう答えながら、ふと夏美の方へ目をやる。


 夏美はいつも、休憩を自分の席で取っている。

 今は取りつかれたように、本を読みふけっていた。
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