成瀬課長はヒミツにしたい

お祭りの夜

 週末の夕方、真理子はお祭りに行く準備のために、乃菜のマンションに来ていた。

 乃菜は楽しみで興奮しているのか、さっきからずっと鼻歌を歌っている。


 するとキッチンから、眉間にしわを寄せた成瀬が顔をのぞかせた。

「お前なぁ。打ち合わせ中にぼーっとしすぎなんだよ」

「はい?! 誰のせいだと思ってるんですか?!」

 乃菜の浴衣の着付けをしつつ、真理子は頬をぱんぱんに膨らませて振り返った。


「俺か? なんで?」

 成瀬は、準備した乃菜の水筒をダイニングテーブルに置くと、首を傾げながら椅子に腰かける。

 テーブルに片肘をつき、長い足を組む様はなんとも麗しくて、真理子は一瞬言葉に詰まってしまった。


「なんでって……そりゃあ……」


 ――成瀬課長の事が気になるから……なんて、言えるわけないじゃない。


 真理子はジトっと、横目で成瀬を見る。
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