成瀬課長はヒミツにしたい
「成瀬課長の態度も変でしたよ。普段は氷みたいに“冷え冷えクール王子”なのに!」

 しばらくして、真理子はわざと嫌味たっぷりな声を出した。

「なんじゃそりゃ? 俺はいつも通りだったけど?」

「いいえ。違いましたね! 私に対する不機嫌っぷりが、ばっちり顔に出てました」

 真理子は腰に手を当てながら、勢いよく成瀬の前に立ちはだかった。


「そうか?」

 成瀬は真理子を見上げながら、しきりに首を傾げている。

「成瀬課長が、いつもと違う顔を見せるから、私、佐伯くんに疑われちゃったじゃないですか」

 真理子はぷいっと横を向いた。


「そうなのか? 佐伯のやつ、何て言ってたんだ?」

「成瀬課長と親しいのかって、聞かれましたよ」

 真理子の言葉に、成瀬は目を丸くする。


「へえ? あいつ結構、勘が鋭いんだな。もしかして……」

「ん?」

 真理子は、成瀬を振り返ると首を傾げた。
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