成瀬課長はヒミツにしたい
 車は夜遅くにマンションに到着した。

 真理子は乃菜を、抱きかかえて車から降ろす。


「すまん。一件、電話してから上がるから」

 成瀬は真理子に声をかけると、足早にエントランス奥のソファが並ぶ、共用スペースに消えていった。

「乃菜ちゃんのパパに、報告するのかな……」

 真理子は、乃菜を抱きかかえる手にぐっと力を込めると、エレベーターに乗り込んだ。


 部屋に着くと、そのまま乃菜をベッドへと連れて行く。

 上着を脱がせそっと横にさせると、乃案がうっすらと目を開けた。

「ごめんね。起こしちゃったかな」

 真理子が顔を覗き込むと、乃菜は首を振りながら真理子の手をぎゅっと握る。


「まりこちゃん。おててつないでて……」

 乃菜は小さくそう言うと、またすうっと眠りに落ちた。

「よっぽど怖かったんだね。安心して。ずっと側にいるよ」

 真理子はそう乃菜の耳元でささやくと、小さな手を包みこむように握る。

 その内にだんだんと瞼が重くなり、ベッドに伏せるように眠ってしまった。
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